架空世界の歩き方。

声劇台本とか書き起こしとかいろいろ

Ordinary day

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Discordサーバー「声劇荘」にて即興台本として挙げた台本をそのまま載せてます。

 

利用規約

https://mituski13.hatenablog.com/entry/2021/06/15/%E5%88%A9%E7%94%A8%E8%A6%8F%E7%B4%84


A.彼女

B.彼氏

A.ねぇ、ちょっと起きてよ!
B.ん? 何なんもぉー?
A.今日行くって約束したじゃん
B.あ? どこによ
A.病院!
B.あぁ? 言ってたっけそんなこと
A.言ったよ
B.今日じゃないとダメ?
A.だって予約しちゃったし……
B.えー めんどくさいよ 一人で行って来いよ
A.……免許持ってないし
B.はぁー。じゃあ今日の晩飯はスコッタイドね
A.えぇ、アンタそればっかじゃん、偏食!
B.作ってくれないならいいよ、送ってかなーい
A.はぁー?
B.だって人にモノ頼んでるんだから何かしてよ
A.この前「いいよ」って言ってくれたじゃん!
B.この前はこの前なんだよ
A.あ! 外凄いこととなってんじゃん! 洗濯物は!?
B.あ? あ、忘れてた
A.えー! なんでよぉ! 外は黒点が出てるんだよ! 昼寝なんかするからぁ! コロナル・マス・エジェクションが来そうだよ早く取り込んで!
B.はぁ…わかったよ。……てかお前何やってんだよ
A.アタシ外出るならプラズマ除去化粧しなくちゃ
B.何でだよ! 手伝えよ!

A.取り込んだ?
B.おう。そっちは?
A.終わった
B.調べたけど今日の天気10MeV(メガ電子ボルト)だってよ
A.え?この前52GeV(ギガ電子ボルト)だったのに?
B.季節の移り変わりは早いね
A.そうだね
B.プラズマ除去機持った?
A.うん
B.高エネルギー荷電結合装置は?
A.もったよ
B.病院どこ?
A.1万光年 グリーゼ876dだよ
B.なんだ隣の星じゃん
A.そうだよ、コロナル・マス・エジェクションって傘いるっけ?
B.要らないよ、どうせロードスターで行くんだから
A.えーX線当たったらどうすんの?
B.だったら病院行けばいいだろ。仮に高射X線でドロドロになっても変わらず愛してるよ。水槽に入れてな
A.はぁ!? そんなことになったエイリアンになって呪ってやるから
B.バカ、何言ってんだよ、早く行くぞぉ

Carnation【MultiED】

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利用規約

https://mituski13.hatenablog.com/entry/2021/06/15/%E5%88%A9%E7%94%A8%E8%A6%8F%E7%B4%84

 

西城渉   男 無口な掃除屋
元ボクサー。若くしてチャンピオンになった期待の新人。とある事情でボクシングを辞めることになり掃除屋(殺し屋)として使われるようになる。

 

村瀬陽一  男 チンピラ
元ボクサー。無敗王者に座していたが自分が育てた期待の新人に敗れてしまう。それ以降は夢を諦め転々とし、今は運送業で生活している。

 

前田侑子  女 花屋店長
花屋の店主。おしとやかで可憐だが、芯のあるしっかりとした人

 

篠原小町  女 花屋バイト
ギャルっぽい見た目と物言いだが実は小心者。村瀬をちょっとだけ意識してる

 

長谷川亮司 男 関西弁の若衆
ドぎつい関西弁(河内弁)で話すヤクザ。人当たりが良く人情もあるが所詮はヤクザ

 

組長    男 ヤクザ組長  兼役
使えるものは何でも使う、ヤクザの悪いとこを詰め込んだような人

 

浜野    男 舎弟     兼役
組長の付き人、草鞋を温めるタイプ。組長と似た性格

 

客     女 花屋の客   兼役
ガーデニングを始めようとした人、すべての発端

 

西城加奈  女 西城の妹   兼役
西城の妹、くも膜下出血で長期入院中

 

石坂    男 モブヤクザ  兼役
序盤のやられヤクザ

 

業者1   男 モブヤクザ  兼役
ちょっと冷静なヤツ

 

業者2  男 モブヤクザ  兼役
ちょっと手が早いヤツ

 

リングアナ 男 兼役
序盤のテンション高いヤツ

 

 

最少配役表 3:2
男 西城&浜野&業者1or2
男 村瀬&組長&石坂
女 侑子
女 小町&客&加奈
男 長谷川&リングアナ&業者1or2

 

分岐は最初に役者の皆さんで話し合って決めてから、台本読みを行えばスムーズにいくと思います。

 

長谷川の喋る河内弁が分からない方は「河内のおっさんの歌」「好っきやねん」か「和牛(お笑い芸人)の川西」で調べると参考になると思います。

 

 

<リング会場にて>
リングアナ.おぉっと鋭い一撃がボディに入ったぁ!村瀬がダウゥゥゥンー!!
村瀬.うぅっ! クソっ……! まだだっ……!!
ぐふっ…… チクショウっ…… 立て、ねぇ…… まだ、終わるわけには……
<SE:ゴング>
リングアナ.決まったああぁぁ!! 無敗王者陥落ぅぅ!! 残念ながら防衛ならず!! 勝者は新進気鋭のスピードスター!! 西城ワタルぅぅー!! 12ラウンドKO勝ちィィー!!

 

 

<昼、花屋にて>
<侑子と小町が花を束ねている>
小町.こんな感じですか?
侑子.数が多いわね。ちょっと減らしてみて
小町.えーっと……コッチをですか?
侑子.うん。それでスッキリした感じしない?
小町.おぉーすごーい、確かにぃ
侑子.これにはちょっとした法則があってね
小町.法則、ですか?
侑子.そう。ダズンフラワーって言って1ダース、つまり12本にするの
小町.ほうほう
侑子.そして、同系色・近似色・反対色の3種類のどれかで纏めたほうが綺麗に作れるよっていう法則があるの。
小町.はい
<侑子が花を使って説明する>
侑子.同系色は暖色のイエローベースと寒色のブルーベース。同じ色でも彩度と明度の違いで揃えれば綺麗に見える
小町.へー
侑子.近似色は隣同士の色で揃えるの、赤色と黄色を混ぜたらオレンジ色になるでしょ? つまりこのオレンジを入れるなら赤と黄色を入れると華やかに見えるようになるわ
小町.確かに
侑子.反対色は色相環の反対の色で組み合わせて作るってやつだけど、感覚的なものだし私もあんまりやったことないから、お客さんから指定されない限りやらなくてもいいと思う
小町.なるほどー
侑子.あと花を纏める時は「主役・脇役・エキストラ」って考えると作りやすいわね。主役の花を中心に置いて、それと同系色か近似色の脇役、あとは纏め方にもよるけどエキストラで別の花を置いたり、葉っぱで包んだりすれば結構いい感じに作れるのよ
小町.……よし! メモ取りました! バッチリです!
侑子.うん、じゃあもう一回だけやってみて
小町.えーと……同系色だから……こうですか?
侑子.うーん、確かにこれでも色合い的には悪くは無いんだけど、4種で纏めるのはあまり良くないのよ
小町.あーもしかして、4(死)を連想するから、とかですか?
侑子.そう。私はあまり気にしないんだけど、お歳を召した方からたまにクレームが来ちゃうから気を付けたほうがいいのよ
小町.へぇー、何かメンドクサイっすよねぇ
侑子.しょうがないよ、花を贈るってのは気持ちの問題だから。お花の知識があるに越したことは無いけど、最終的にはそういう気配りが大切なのよ
小町.へー
村瀬.こんにちは! どうもでーす!
侑子.あら。村瀬さん、こんにちは
小町.よっ
村瀬.よっ! コマっちゃん! 今日も可愛いねー!
小町.いっつもそれじゃん
村瀬.(笑う)悪いかよ!……侑子さん、今日はかなりありますね、どこ置いたらいいですか?
侑子.あぁ、えっとー、裏まで運んでもらえます?
村瀬.了解っす
侑子.コマっちゃん?
小町.はーい
侑子.私ちょっと事務所に居るから、表頼める?
小町.わかりましたー

 

 

小町.手伝おうかー?
村瀬.ん? いいよ、もう終わるし
小町.ここ暇だし、やることないからさー
村瀬.その細い腕じゃ持てないから
小町.はぁー? やってみなきゃ分かんないでしょ!?
村瀬.試しに持ってみる?
[小町が手を差し出す]
小町.ん、乗せてみて
村瀬.ほいっ
小町.いやあ"ぁ"ー!! 無理無理無理無理っ!!
村瀬.(笑う)ほら、言っただろ
小町.なにこれ? 何が入ってんの?
村瀬.ピートモスだよ
小町.ぴーともす? なにそれ?
村瀬.腐ったコケや葉っぱを砕いた土。コマっちゃん花屋なんでしょ?
小町.ふーん。陽一って、アタシより花のこと詳しくない?
村瀬.コマっちゃんが知らなすぎるんだよ
小町.あ、そうだ。聞いて聞いてー
村瀬.あ? なに?
小町.夜にさぁ、いつも気持ち悪い客が来るのよ
村瀬.気持ち悪い客?
小町.そうなんよ、アタシ怖いからいつも侑子さんに任せてるんだけどさ
村瀬.どんな奴だ? 男?
小町.男。もうなんか強烈にヤバいオーラが出てて全然喋んないし、そして花を一本だけ買っていくんだよ? 一本だけとかある普通?
村瀬.別に花買いに来ただけだろ? 普通だと思うけど
小町.もうとにかくヤバいの! 侑子さんは平気な顔で相手してるけど……
村瀬.(笑う)それを俺に言ってどーすんのよ
小町.もー! そうじゃなくて!
村瀬.わかったわかった! そいつがコマっちゃんや侑子さんになんかして来たら、俺がソッコーでぶっ飛ばしてやるから
小町.ホントにぃ?
村瀬.おう
小町.鬼電するよ!
村瀬.えー、それはヤだなぁー
小町.じゃあテレパシーで送りまーす! ビビビビーって
村瀬.(苦笑)わかった! わかったから!
侑子.ちょっと、あまり村瀬さんを困らせないの
村瀬.いえ、大丈夫っすよ。では搬入終わりましたんで失礼しますね
侑子.いつもありがとうございます
小町.また来てねー
侑子.……ちょっと! 村瀬さんだってお仕事で来てるんだから、そんなナンパみたいなことしちゃ迷惑になるでしょ。しかも名前で呼んでるし、来なくなっちゃったらどうすんの?
小町.しょーがないじゃないですかぁ……イケメンなんだしー
侑子.イケててもイケてなくてもダメなものはダメなの、次やったら怒るからね
小町.はーい
侑子.あ、ほら、お客さんきたわよ
小町.こんにちはー、いらっしゃいませー
侑子.ごゆっくりご覧くださいね
客.素敵なお花がいっぱいですね。今度またウチの庭にも植えてみようかな
侑子.あら、お客様、ガーデニングなさってるんですか?
客.はい。ランやガーベラとか……ブルーベリーも育てたことあります
侑子.そうなんですか、素敵ですね
客.庭の造形と苗木を植えるところまで業者さんにお願いしたんですけど……時期になっても咲かないし、咲いても実が小さかったりで……
侑子.そうですか……
客.それで同じ業者さんに調べてもらって、今度土ごと入れ替えてもらうことにしたんです
侑子.土って、お庭の土全部ですか?
客.はい。結構な値段になっちゃうんですけど、仕方ないのかなぁって
侑子.あの……業者さんにどんな説明を受けられました?
客.土が腐ってる状態で花が育つ環境じゃないって
侑子.土が腐ってるですか……ほかに何か言ってました?
客.いえ、よく分からないですけど、土を変えれば大丈夫だって言われて
侑子.……差し出がましいようですが、もしかしたら今の土のままでなんとかなるかもしれません
客.え? 本当ですか?
侑子.詳しくは実際に見てみないと分からないですけど……土は大きく分けて酸性・中性・アルカリ性のものがあるんです
客.酸性、アルカリ……知らなかったです
侑子.育てるお花や作物によって土の性質を整える必要があるんですよ。例えば、ブルーベリーなら酸性。ガーベラなら弱酸性から中性の土で育てる必要があります。なのでその都度細かく土を混ぜたり肥料を加えたり調整しないといけないんです
客.調整ってどんなの使えばいいんですか?
侑子.苦土石灰(クドセッカイ)や草木灰(ソウモクバイ)といった肥料を使って調整するといいですよ。お金もそんなにかかりませんし
客.そうなんですか
侑子.土の数値を計る土壌測定器も通販やホームセンターで買えばそんなに高くないですし、業者さんに土を入れ替える前に少し様子を見てみるといいかもしれませんね
客.そっかぁ、ただ植えればいいって訳じゃないんですね……もうちょっと考えてみます。せっかく色々始めちゃったし、少しは自分の手で面倒見てみようかなって思います
侑子.手間暇かければ、それだけお花に愛情が湧きますよ
客.本当にありがとうございました。また困ったときに聞きに来てもいいですか?
侑子.はい、いつでもお待ちしております
小町.ありがとうございましたー

 

 

侑子.あの人どうするんだろ。とりあえず思い留まって良かったけど……
小町.どーなんでしょうね


<夜、花屋にて>
小町.いらっしゃいま……あっ
西城.……
侑子.あら西城さん、いらっしゃい
西城.……いつものを頼む
侑子.白のカーネーションですね?
西城.ああ
侑子.150円になります
西城.どうも
侑子.いつもありがとうございます
小町.ありがとうございましたー

 

 

小町.侑子さんよく対応できますね
侑子.そう?
小町.しかもいつも白のカーネーション一本だけって……
侑子.宗教によっては葬儀の時に手向けられることもあるけど
小町.え!? じゃあ、しょっちゅう周りで人が死んでるってことじゃないですか?
侑子.どうなんだろ、無口な人だから私にも分からないけど……でも
小町.でも?
侑子.なんだか悲しそう


<裏路地にて>
石坂.はぁ……! はぁっ……! クソっ! 行き止まりかよ! て、てめぇ! 来るなぁ!
<石坂が懐から銃を取り出す>
石坂.てめぇ! この銃が見えねぇのか!
西城.ふっ……
石坂.クソが、俺を怒らせやがって……死ねやぁ!
<銃声が響く>


<ヤクザ事務所にて>
<ノックの音>
組長.おう、入れ
西城.……失礼します
組長.よう石坂をやってくれたわ。やっぱお前は頼りになるなぁ
西城.……報酬を
組長.(大笑)せっかちなヤツだなぁ!……ほら、約束の金だ
西城.確かに
組長.じゃ、また次回
<西城退室>
浜野.……親父、アイツ何者なんです? 人に対する礼儀っちゅうもんを知らんのかい
組長.アイツは掃除屋だ。金さえ払えばどんな奴でも消してくれる。道具持ったやつにも素手で殴り殺してしまう男だ
浜野.殴り殺すって……素手でですか!?
組長.そうだ。昔はプロボクサーとして相当鳴らしてたらしい。けど八百長の話を蹴って業界から居られないようになったんだとよ
浜野.はぁ
組長.今じゃ落ちるところまで落ちて、ヤクザの小間使いやってるっていう哀れな奴よ
浜野.(失笑)確かにそうっすね
組長.まったくだ。しかもアイツはどういう事か、殺しの現場に花を置いていくんだ
浜野.花……ですか?
組長.ああ、白いカーネーションを一輪、必ず置いていく
浜野.はぁ? なんすかそれ?
組長.殺人鬼がわざと証拠を残すやつと一緒で、殺しのサインだろ
浜野.(笑い)歪んだ自己顕示欲ってやつっすかね
組長.そんなもんだろ


<昼、病院にて>
<西城入室>
加奈.……あ! お兄ちゃん!
西城.おう、変わりはないか?
加奈.うん
西城.調子は?
加奈.全然大丈夫!
西城.……髪も大分伸びたな
加奈.でしょー!
西城.もうカツラは要らないのか?
加奈.カツラじゃなくてウィッグって言ってよ。頭の傷ももう目立たなくなったしニットも最近は使ってない
西城.リハビリは?
加奈.ちょっとづつ良くなってるって。麻痺も大分軽くなったし、退院も視野に入れてるって先生が言ってた
西城.そうか
加奈.……嬉しくないの?
西城.ん? いや、嬉しいよ
加奈.全然嬉しそうじゃないけど
西城.最近、仕事が忙しくてな
加奈.……いつも苦労かけてごめんね。大好きなボクシングも私のせいで諦めさせちゃって
西城.おい、もうその話は終わっただろ。
加奈.でも……
西城.なんか必要なものあるか?
加奈.……ないよ
西城.わかった。じゃあ帰るわ
加奈.うん。ありがと
西城.おう


[昼、花屋にて]
侑子.村瀬さん?
村瀬.あー、はい!
侑子.コレとコレは奥に置いてもらえますか?
村瀬.了解っす
小町.いらっしゃいませー
業者1.どうもこんにちは。店長さんはいますかね?
小町.はい、少々お待ちください
業者1.ええ
小町.侑子さーん
侑子.なに?
小町.お客さんから店長を呼んでくれって……
侑子.わかった、すぐ行くね
小町.はーい

 

 

侑子.すみませんお待たせしました
業者1.あなたが店長さん?
侑子.はい
業者1.あなたに少しお話しておきたい事があるんですよ
侑子.なんでしょうか?
業者1.1週間程前、ガーデニングについてお客さんにアドバイスされたそうで
侑子.ええ、どうしてそれを?
業者1.私ども、その方のガーデニングの施工を請け負ってる者でして、顧客からウチに連絡があったんですよ
業者2.「ここの花屋に色々言われて土は入れ替えないようにした」ってな
侑子.あなた方だったんですか……
業者1.んー、困るんですよねぇ。商売の邪魔されちゃあ
侑子.そんな、邪魔なんてしたつもりは……
業者2.アンタが余計な事をベラベラ言ったから、客が逃げちまっただろうが!
侑子.ただ……ただ私は、正しい知識を持って、ガーデニングを楽しんでいただきたかっただけです
業者2.なんだと?
業者1.ほう、ウチが間違ってたと?
侑子.そうは言ってないです。お客様に説明もせずに施工を薦めるのはお客様にとっても良くないと思って……
業者2.説明ならしたさ、土が腐ってるってな
侑子.それでは説明になっていません! ちゃんと土の性質を調べれば丸ごと入れ替えるなんてことはしなくてもよかったはずです
業者2.それで、都合のいい説明をしてそちらはウチの顧客を横取りしたと
侑子.お言葉ですけど、あなた方も施工を請け負ったなら最後まで責任を果たすべきではないでしょうか
業者1.これ以上は平行線になりそうですね……ふぅーん、それにしてもいい店構えだ
侑子.一体何の話ですか?
[業者2が鉢植えを蹴って割る]
侑子.キャッ!
業者2.おっとすみませんねぇ、躓いちまったって
侑子.ちょっと! あなた達どういうつもりですか!
業者1.すみませんねぇ、うちのモンは足癖も悪くてね
村瀬.おいお前ら、ふざけんのもいい加減にしろよ。とっとと帰りやがれ!
小町.ちょっと、村瀬さんっ……!
[小町が村瀬の手を引っ張るが、村瀬は振りほどいて業者の前に立つ]
業者2.あ? なんだてめぇ?
村瀬.店をメチャメチャにされてるのを見過ごせねぇ、ただの通りすがりの運送業者だよ
業者1.(嘲笑)丁度、今ムシャクシャしてたところなんだよ。誰だっていいや……おい、コイツをやれ
村瀬.おう、来るなら来いよ
侑子.村瀬さん……
村瀬.侑子さんは下がっててください
業者2.死ねやぁ!
[業者2のパンチと同時に村瀬が懐に入りボディブローを入れる]
業者2.グフぁ!
村瀬.なんだぁ、そのパンチぃ
業者1.ふっ!……ぬん!……うらぁ! 
[業者1が手足を出すが村瀬はあしらう様に避ける]
村瀬.遅い遅い、当たんないよ、そんなんじゃ
業者1.クソがぁ!
[村瀬のカウンターが決まる]
業者1.ぐふっ! ぶほわぁ!
業者2.うりゃあぁー!
村瀬.寝てろっ!
[素早い右ストレートが顔面に当たる]
業者2.うぶっ! ……がはっ!
村瀬.……おいおい、もう終わり? アンタ達イキってた割には大したことないねぇ
業者1.クソっ!……おい! 帰るぞ!
侑子.あ、ちょっと待ってください!
業者2.あ?
侑子.鉢植えを倒したこと……謝ってください!
村瀬.侑子さん?
業者2.一本や二本でガタガタ言うんじゃねぇ!
侑子.お花だって生きてるんです!
業者2.あぁ?
業者1.もういい、いくぞ!
侑子.あ! ちょっと待って! ……はぁ
村瀬.侑子さん大丈夫っすか?
侑子.はい、村瀬さんも大丈夫ですか?
村瀬.いやぁ一発も食らってないんで、全然平気っすよ。……それにしても侑子さん、今のメチャメチャかっこよかったです!
侑子.え? あ、その……私にはどれも大切な子達だから……あ、花差し替えないと
小町.やっときましたよ
侑子.あ、ごめんね。ありがとうコマっちゃん
小町.いえいえー
村瀬.……それにしても、とんでもない奴らだな
侑子.あの村瀬さん。本当に、ありがとうございます
村瀬.いやぁ、お安い御用っすよ!……あ! いけね! 次の搬入行かなきゃ! ……では!
侑子.あの! 本当にありがとうございましたぁ!
小町.……あーあ、行っちゃった。
侑子.……そうね
小町.てか侑子さん、もう教室の時間じゃありませんでした?
侑子.あ、そうだった! ゴメン、私もちょっと行ってくるね
小町.はーい
侑子.コマっちゃん、またさっきのが来たら即110番ね!
小町.ラジャー! 侑子さんも気をつけてくださいねー
侑子.うん。じゃあ行ってきまーす
小町.はーい


[夜、ヤクザ事務所にて]
組長.よくやった西城
西城.……報酬を
組長.ほれ
西城.……では

組長.おう
浜野.おい! おめぇ、誰に対してそんな態度とってんだぁ? おぉ!
西城.……
組長.(大笑)浜野、そんな突っかかんな。コイツは仕事さえやってくれればいいんだよ。……それに、お前は人によってコロコロ態度変えるようなヤツじゃないだろ、なぁ?
西城.……
組長.ほら、さっさと持って帰れ
[西城退室]
浜野.……ったく気に入らねぇな
組長.あぁ、俺も好きじゃねぇが、使えるヤツは使っておくんだよ。お役御免になったらゴミ箱行きだ
浜野.アイツもいつまで続くかってトコっすね
[ノックの音]
長谷川.失礼しますぅ
組長.おう、長谷川! やっと来たか!
長谷川.いつも、お世話になっております
組長.お前、アッチの商売は今どうなってるんだ?
長谷川.いやぁー、まぁボチボチですわ!
組長.何がボチボチだよ、兄弟の奴がベタ褒めしてたぞ。羽振りよさそうにしてたしなぁ
長谷川.それは光栄ですぅ。ところで伯父貴、その……用事ってのは何です?
組長.ちょっとな、頼みを聞いてほしい
長谷川.頼み、ですか?
組長.あぁ。まぁ、簡単な仕事さ。だがお前にしか頼めんことだ……


<夜、大通りにて>
侑子.あら、西城さん
西城.……!
侑子.あ、ごめんなさい。突然呼び止めてしまって。たまたまお見かけしたもので
西城.そうか
侑子.……あの、もしかして何かありました?
西城.何故そう思う?
侑子.あ、いえ……なんだか悲しそうな顔をしてるから
西城.……そうか
侑子.あ! 待ってください! よかったらこのお花、貰ってくれませんか?
西城.これは?
侑子.チューリップです。学校で育てたりしませんでした? ……私、花には人を笑顔にする力がある。そう思うんです
西城.……
侑子.それに、チューリップの花言葉は「思いやり」……西城さんにピッタリだと思いません?
西城.思いやり?
侑子.はい。いつもカーネーションを買いに来てくれる時の西城さんは悲しそうですけど、私にはどこか、優しそうにも見えるんです。
西城.……
侑子.だから、いつも買っていかれる花は誰かへの思いやりなのかなって……
西城.……
侑子.あ! す、すみません。勝手な事ばっかり……何言ってんだろう私ったら
西城.その花
侑子.?
西城.もらってく
侑子.はい! 大切にしてくれると、ありがたいです
西城.じゃあ
侑子.それでは
[西城退場]
侑子.……もう、何やってんだ私のバカ……!


[病室にて]
[ノックの音]
西城.入るぞ
加奈.うん
西城.……どうした、体調悪いのか
加奈.そうじゃないけど
西城.(微笑)もう病院は飽きたか
加奈.そんなのもうとっくに飽きてるよ
西城.そうだよな
加奈.ねぇ、お兄ちゃん。何? その花
西城.チューリップ
加奈.それは知ってるけど、それ買ったの?
西城.なんで?
加奈.なんででも
西城.? 意味わかんねぇよ
加奈.私に買ってきたんじゃないでしょ
西城.なんでそう思う
加奈.なんとなーく。勘?
西城.なんだそれ
加奈.それ、お兄ちゃんへの贈り物じゃないの?
西城.そうかもな。まぁ、でも俺の家に置くとこ無いし……
加奈.そもそもあり得ないし
西城.あ?
加奈.(笑い)お兄ちゃんが花買ってくるなんて、そんなセンス無いじゃん!
西城.はぁ? あるわ! それくらい
加奈.(大笑)ウソぉー!?  
西城.お前何笑ってんだよ
加奈.いつもダサいから、そんなセンスなさそーって思って
西城.別にダサくねぇよ
加奈.あ、意地張ってるー!
西城.張ってねぇよ、俺が最先端すぎるんだよ
加奈.(笑い)何それー!


[夜、ヤクザ事務所にて]
組長.というワケなんだが、その後の調子はどうだ?
長谷川.手筈は整ってますんで、いつでも準備はできとります
組長.ほぅ、早いな
長谷川.鉄は熱いうちに打たんと、冷えて固うなってしもうたら状況は難しなってしまいますんで
組長.(笑い)確かに、最強の戦法は電撃戦とも言うしな……じゃあ、タイミングはお前に任せるわ
長谷川.……あのぉ
組長.ん? 何だ
長谷川.申し訳ないですけど、コッチも一人で動いてますんで出来れば兵隊を2.3人貸していただきたいんですけど……
組長.なんだ、そんなことか。だったら浜野の使え
長谷川.浜野の兄貴とは折り合いが悪くて……
組長.(大笑)なるほど、そうかそうか。じゃあ何が欲しい
長谷川.あの腕っぷしの強い奴を
組長.殺し屋か
長谷川.ええ
組長.……わかった。もうそろそろ来るから待っとれ


<夜、駐車場にて>
<長谷川はタバコを吸っている>
浜野.おう、長谷川
長谷川.お疲れ様ですぅ
浜野.気になってたが。お前、親父と仲いいなぁ
長谷川.(嘲笑)なんや嫉妬かい。思春期の女かいな
浜野.……親父に何言われた
長谷川.あ? ただのお使いですわ
浜野.何の
長谷川.土地の権利書、店の経営権を伯父貴が持ってきてほしいんやと
浜野.あそこか、あそこは俺のシマだぞ。許可も無しに好き勝手しやがって
長谷川.ワシはただ伯父貴から頼まれて動いとるだけじゃい、上のモンに許可貰っとるがな。文句があるなら伯父貴に言ってくれや
浜野.あぁ? お前、調子乗るのもいい加減にしろよ……!
長谷川.(嘲笑)アンタら、東京のモンは道理っちゅうもんを知らんのかい
浜野.あ?
長谷川.伯父貴から聞いたでぇ、そもそもそのヤマしくじった造園業者はお宅のモンやろがい。ソイツらもアンタも使いもんにならから、こうして遠路遥々大阪からワシが呼ばれたんとちゃうんかい。えぇ?
浜野.なんだとぉ?
長谷川.それと聞いた話やけど、浜野さん言うたら、金魚のフンみたいに伯父貴に付いて回ってるだけで、しょっぱいシノギばっか掠めて勤めにも行かんと、何も出来んヤツやってみんな陰で噂しとるがな
浜野.てめぇ誰に口きいてんだ、喧嘩売ってんのか!? おぉ!?
長谷川.なんややるんかい。……一度トチったシノギがお前に回せるんかいな。えぇ?
浜野.……くっ!
長谷川.そうやってすぐ人を蹴落とそう蹴落とそうって考えてるからアカンねや。堅気もヤクザも、人間常に上を目指さんと腐ってくで。しょっぱいし臭いし、腐った食い物なんか誰が好き好んで食うねん
浜野.それが俺のやり方なんだよ
長谷川.そうかい。ま、頑張ってくれや
浜野.……てめぇ見張ってるからな
長谷川.(嘲笑)ほな
<タバコを落とし踏みつけて、長谷川退場>
<浜野が電話をかける>
浜野.……おい、俺だ。長谷川に動きがあったら何でもいいからすぐ報告しろ、わかったな……


<教室にて>
侑子.色合いもカラーパレットを見て、ベースカラーとサブカラーで並べていく事でよりキレイに見えるようになります。ギャザリングを行う際は背の高い花を後ろに、低い花を前に挿して。一か所に縮こめるよりも360度、空間全体を満遍なく使うと華やかなギャザリングになります
<時計が鳴る>
侑子.あら、もう時間ですね……本日はこれで以上になります。それではみなさんまた来週、お待ちしてます。ありがとうございましたー

 

 

<侑子が片付けを始める>
侑子.……はぁ。よいしょ
<メガネをかけた長谷川が現れる>
長谷川.あのぉー……
侑子.ひゃっ!
長谷川.おぉっ! ……(微笑)ちょっとぉー、ワシですがなぁ
侑子.あっ、は、長谷川さんですか。ヤダ、ビックリしちゃった。ちょっと驚かさないでくださいよー!
長谷川.いやぁ、すんません。驚かす気はなかったんですけど……
侑子.いえいえ、こちらこそ
長谷川.あの、今日の授業も大変勉強になりましたわ
侑子.ありがとうございます
長谷川.この前先生に教えてもらったアレンジメント、アレあげたら家内もごっつ気に入ってまして
侑子.(微笑)お気に召していただいたなら私も嬉しいです。えっと……奥さんは遠くにいらっしゃんでしたっけ?
長谷川.ええ。仕事の都合上アチコチ行ってるさかい、コッソリ習い事とかして驚かせたいんですわ
侑子.仲のいいご夫婦さんですね。羨ましいです
長谷川.先生は?
侑子.ん?
長谷川.ご結婚は?
侑子.してないです、けど……
長谷川.一度も?
侑子.……はい
長谷川.えっ! ホンマですの! えらいベッピンなのに勿体ないわー!
侑子.え!? いやっ、そんなことないですよ
長谷川.あ、あれや……出会った男達の見る目が無かったっちゅうこっちゃ
侑子.どうでしょうか
長谷川.ワシも、もうちょい早く先生と出会うっとったらなぁー(大笑)
侑子.(笑い)
長谷川.あ、せや。あのー……ちょっと先生にいろいろ聞きたいことがありましてね
侑子.ん? なんでしょうか?
長谷川.いやぁ、なんて言うたらいいんでしょうか……
侑子.あの。よかったら、お茶入れますね
長谷川.あぁいえいえ、お構いなく……あー、ワシが淹れますわ
侑子.え?
長谷川.先生はお疲れでしょうから。さ、座っててください
侑子.いいんですか?
<長谷川が椅子を引く>
長谷川.ええ、どうぞ
侑子.はい。……あの、お話というのは
長谷川.まぁ、大した話やないんですけども……
侑子.……はい
[長谷川が飲み物を作りながら話す]
長谷川.……今日から丁度一週間後、結婚記念日でしてね
侑子.そうだったんですか、おめでとうございます
長谷川.それで、先生花屋さんですよね?  
侑子.はい
長谷川.ちょいとだけ、気の利いたモン送りたいんですわ。なんで、見繕ってくれませんかね?
侑子.んーと、伝いたい内容とご予算が分かればある程度は……
長谷川.かぁー! 予算かぁー、幾らぐらいやろなぁー
侑子.長谷川さんは、奥様にどんな言葉を送りたいですか?
長谷川.……言葉ねぇ
<長谷川、飲み物を出す>
長谷川.はい、召し上がれ
侑子.ありがとうございます。……これは?
長谷川.レモンティーですわ。丁度そこの棚の中に入ってましてね
侑子.あぁ、そうですか
<侑子がレモンティーを飲む>
侑子.……おいしい
長谷川.そりゃそうやわ、市販のティーバックやで。添加物たーっぷりで旨いに決まっとるがな
侑子.(微笑)そうですよね
長谷川.うーん。せやなぁ……やっぱ無難にバラとかがええんやろか?
侑子.一般的にはそうですね。バラには「真実の愛」という意味もありますからね
長谷川.なんか在り来たりやなぁ、捻りがないっちゅうかー
侑子.え? 私は良いと思いますけどね
長谷川.何て言ったらええんやろか、「そこ来る!?」みたいなのが欲しくて
侑子.でしたらストックなんてどうでしょうか? 「愛の絆」なんて意味もありますし、結婚記念日にはピッタリですよ
長谷川.ストック言うたら紫色のアレやんな。悪くはないんよ、悪くは無いんやけどなぁー
<侑子の様子がおかしくなる>
侑子.……!
長谷川.ん? 先生、どないしました?
侑子.あぁ、いえ。……ストックは育て方によって配色が変わるので色々ありますよ。値段もそこまで高くないですし
長谷川.あ、アレ何やったっけ? あのー、ティッシュをクシャクシャってしたみたいなヤツ! この先週の教室でも使ってましたやん、アレ何やったっけなー
侑子.カーネーション……ですか?
長谷川.そう! それやわ! 先生のその素晴らしいセンスで、見繕ってもらえませんでしょうか
侑子.……はい
長谷川.カーネーションやったら値はそんなに張らんから、予算は大体ぃ……
侑子.あの、すみません。ちょっとお手洗いに
長谷川.あぁ、ええ
[侑子が席を立った途端に意識が無くなり倒れる、その瞬間に長谷川が侑子を抱える]
長谷川.よっとー! ……やっとお眠りかい、お姫様


<空部屋にて>
侑子.……っ?
[侑子が目覚めると、先ほどとは雰囲気の違う長谷川が立っている]
長谷川.ワレやっと起きたんかい
侑子.……長谷川…さん?
<侑子が椅子に縛られている事に気づく>
侑子.ん?……っ! ちょっと、これはどういうつもりですか!?
長谷川.まぁ慌てなさんな。好きな男にみっともないトコ見せられんやろ、なぁ?
<長谷川の視線の先には西城が立っている>
西城.……
侑子.……西城さん!? ……なんでここに?
長谷川.ウチのキザオ君がいつもお世話になっとりますわ
侑子.西城さん、これは一体……
長谷川.コイツはな、アンタが思うとるようなヤツちゃうで。なんせヤクザに雇われとる殺し屋やからの
西城.……
長谷川.そんで、ターゲットを始末した後にカーネーションを置いていく。それがアンタのトコで買うてく花や。キザな奴っちゃろー、のぉ?
侑子.こんな事して、一体何が目的なんですか?
長谷川.何か月か前に造園業者と喧嘩したやろ。その業者は所謂ヤクザの下請けでの、色々その花屋の事調べたら丁度不動産の競合場所やったんや。お前んトコ、今まで何回か地上げ屋が来たことあるやろ?
侑子.はい
長谷川.最近まで5億だった土地が今10億まで跳ね上がっとんねん。お前が意地張ってギリギリまで粘っとるからこんな事になるんやろがい。えぇ?
侑子.別に意地なんか張ってません! 私はただ、夢だった花屋をお金で終わらせたくなかっただけです……!
長谷川.カッコええなぁー、惚れそうやわぁー。やけどなあ、この状況でどこまで意地張れるかのぉ
侑子.……私を、どうするつもりですか?
長谷川.まぁ、殺してもええし、売り飛ばしてもええけどやな、その前にやってほしい事があんねや
侑子.……
長谷川.土地と店の権利書、名義はジイさんやけど持っとんのはお前やんな? 渡してくれんか。留守の時に家と店探したけど無かったんや。
侑子.……っ!
長谷川.どこにあんねん
侑子.……
長谷川.お嬢さん頼むでぇ、ワシも女は殴りと無いんや。分かるやろ?
侑子.……せん
長谷川.ん? 聞こえんなぁ
侑子.……言えません
長谷川.(溜息)……そうかい、残念やのぉ
<侑子の頬を思いっきり叩く>
侑子.んっ!
長谷川.堪忍してくれや、これも仕事の内じゃい。はよ言え
侑子.……
長谷川.まったく強情やのぉ、こっちはもう一枚カード持ってんでぇ
侑子.?
長谷川.確か小町っちゅうケバい小娘が居ったやろ、アイツに頼むしかないの
侑子.ヤメて! あの子は関係ないでしょ!
長谷川.ない事あらへんがな、被害を最小限に抑えたいなら言うこと聞いとった方がええで、な
侑子.……わかりました
<長谷川が侑子の携帯を差し出す>
長谷川.ほれ
侑子.え?
長谷川.ワシが店に電話鳴らすから、小町とかいう従業員に書類取ってこさせい
侑子.解いてくれたら、私が直接取りに行きます
<長谷川が時計を見る>
長谷川.……
侑子.……あの子を巻き込んでほしくないんです。お願いします
長谷川.無理や。ほれ
<長谷川が侑子の携帯で店に電話をかける>
<発信中、しばらく沈黙が流れる>
小町.……お電話ありがとうございます、フラワーショップ・アンジェリカです
侑子.……
小町.もしもし?
長谷川.はよ
侑子.コマっちゃん……
小町.あっ! 侑子さん!? ちょっと、今どこですか? ずっと携帯にかけてたんですよー?
侑子.……
小町.あれ? 侑子さん? もしもーし?
長谷川.おい
侑子.コ…コマっちゃん?
小町.はい?
侑子.コマっちゃん。頼みたいことがあるの
小町.……はい
侑子.事務所の机の中に鍵のかかった箱があるでしょ?
小町.え? ちょ、ちょっと待ってください
<小町、電話をもって事務所に向かう>
小町.はい、ありました
侑子.開けてちょうだい。番号は2284
小町.……開けちゃっていいんですか?
侑子.いいから早くして……!
小町.はいっ! ……開けました
侑子.その中に赤いタグのついた、先っぽが丸い鍵があるでしょ
小町.あー……はい、ありました
侑子.それを持って、隣町にある貸倉庫の14番にある青い……
小町.ちょ、ちょっと待ってください! ……それってホントにアタシが行って大丈夫なんですか? 
長谷川.(舌打ち)……じれったいのぉ
侑子.いいから。大丈夫だから。倉庫の中にある青いファイルを丸ごと持ってきて
小町.……どこに、です?
<長谷川が電話を取る>
長谷川.成城ビルっちゅう建物があるんで、お手数ですが4階まで持ってきてくれませんでしょうか?
小町.あなた、誰……ですか?
長谷川.わたくし、侑子さんの知り合いで、経営コンサルやっとります長谷川言います。今、侑子さんと大事な取引をしましてね。侑子さんは大事な手続きの最中で手が離せませんので、お手数ですが取りに来てもらえませんでしょうか?
小町.ちょっとアタシにはよく分からないんですけど……
長谷川.さっき言いましたやろ、持ってきてもらえるだけでええんですわ
小町.あの。アタシ、その、侑子さんがそんなこと……
長谷川.誘拐しました
小町.……え?
長谷川.ガラ預かってるんで、はよ持ってきてもらえませんかねぇ
小町.(泣きそうになる)
長谷川.サツでも呼んでみぃ、侑子さんどないなるやろなぁ。
小町.え…!? あの……! ちょっ…
<通話を切る>
侑子.……場所は言いました。もういいでしょ、解放してください……!
長谷川.まだや。まだ役者が揃っとらんがな


<夕方、食事処にて>
<村瀬がご飯を食べている>
村瀬.……うん。ウマぁ!
<村瀬の携帯が鳴る>
村瀬.……ん? コマっちゃん? はい、もしもしー
小町.……
村瀬.ん? もしもし?
小町.(泣き)
村瀬.んっ? コマっちゃん? 大丈夫? 
小町.助けてください……!
村瀬.なに? どうかした?
小町.侑子さんが……アタシ、どうしたらいいか分からなくて……
村瀬.ん? もしかして、あの前言ってたヤツが来た?
小町.あ…あのぉ……
村瀬.あー、分かった! すぐ行くから! 今どこ?
小町.……店です
村瀬.おーけー。すぐ行くから待ってて! いい?
小町.はい……


<花屋にて>
<村瀬、走って到着するもシャッターが閉まっている>
村瀬.はぁ……はぁ……。閉まってんなぁ。裏口から行くか
<裏口のドアノブを回すと開いていた>
村瀬.…あ、開いた。……コマっちゃん? 侑子さん? ……誰かいますかー?
<暗い室内の奥で小町が座り込んでいる>
小町.(泣き)
村瀬.ちょ、コマっちゃん!? 大丈夫?
小町.(泣き)
村瀬.どうした? なんかあった?
小町.うわあぁぁん!!
<小町、村瀬に抱き着く>
村瀬.ちょ、ちょっと……どうしたのよ
小町.(泣き)
村瀬.大丈夫……大丈夫だから。な
小町.……うん
村瀬.何があったか教えてくれ。侑子さんは?
小町.グスっ……あのね……誘拐されてて
村瀬.誘拐!?
小町.それでね……


<夜、空き部屋にて>
侑子.……
長谷川.(タバコを吸っている)
侑子.……西城さん
西城.……
侑子.殺し屋って、本当なんですか?
西城.……
侑子.お店に来られる時の西城さんは、そんな人に見えなかったです
西城.……
侑子.何ていうか。大切な誰かを思いやってるような……殺した相手に花を手向けるような人が好き好んでこんな仕事してるようには、私には思えません
西城.……
侑子.……チューリップ、まだ飾ってます?
西城.ああ
侑子.よかった。西城さんには、もっと笑っていてほしいなって。だからチューリップをあの時あげたんです……
長谷川.この状況でも人の心配かいな、できた御方やで
侑子.……
長谷川.コイツにあげたチューリップってのは、妹の病室に飾ってあるヤツかい
侑子.え?
長谷川.この際やからワシの計画全部話そうか
西城.……
長谷川.初めはアンタの教室に通うつもりなんてサラサラ無かったんや。けどな、そこの八百長断ってヤクザのお使いやっとるキザオ君が、妹の治療費の為にウチの組の雇われとるっちゅうのが分かった。そして、調べていくうちにお姫様はキザオ君に気があるっちゅう事も分かった。
侑子.……っ!
長谷川.オマケに小町っちゅう従業員は店の搬入業者の村瀬陽一に気がある。
西城.村瀬……?
長谷川.おもろい事にこのキザオ君と村瀬は同じ元ボクサー、先輩後輩の仲やったらしいのぉ。8年前、無敗王者だった村瀬は後輩である西城に倒される、村瀬からしたら面白ないやろなぁ。ワシにとっちゃあどうでもええ話やけど、造園業者の件で面子が宜しくないっちゅうんで兄貴分から「村瀬を痛めつけるよう」っちゅうしょうもない命令が出とる。やからワシは二人をカチ合わせて村瀬とキザオ君の世紀の対決を最前列で見る。勿論どちらかが死ぬまで殴り合うてもらうけどな
侑子.西城さん! そんなことする必要ないですよ!
長谷川.あるんやなぁこれが……この電話一本で妹さんの病院前で待機してるウチのもんがひとっ飛びやからの。どこやったかのぉ、確か8階の16号室やったっけなぁ、いや待て、17やったかもしれんわ
西城.……くっ!
侑子.卑怯者っ……!
長谷川.あのなぁ。ちなみに言うとくけどな、ワシなんかまだ全然情がある方やで。ひどい奴なんかが仕切ってみぃ、もう二人の家族共々とっくに撃ち殺されとるわい。
西城.……
長谷川.とりあえずお姫様がさらわれたことを知った小町ちゃんは小心者やから村瀬に助けを求める。そして、ピーチ姫大好きなマリオ君が助けにぃ……
<勢いよくドアが開く>
村瀬.侑子さんっ! 大丈夫ですかっ!
長谷川.来るっちゅうこっちゃ
侑子.村瀬さん!
長谷川.待ちくたびれたでぇ。マリオ君
村瀬.……っ! お前……西城か?
西城.……
長谷川.おい、権利書のファイルは持ってきたんか?
村瀬.ああ
長谷川.本物かどうか確認したい。広げて見せてくれ
村瀬.わかった
<村瀬が近づく>
長谷川.……確かに本物やな
村瀬.ワタル……お前、ボクシング止めてこんな事してたのかよ……!
西城.悪かったな
村瀬.テメェ、今何してんのか分かってんのかよ!
長谷川.まあまあまぁ! 喧嘩は後でやれや。 今は権利書や
村瀬.コレを渡したら、侑子さんを解放してくれる保証はどこにある
長谷川.んなもんないわ
村瀬.じゃあ渡せねぇ
長谷川.じゃあこの女も用無しやな
<侑子の背から長谷川が首を絞める>
侑子.うぐっ……!
村瀬.おいヤメろっ!
長谷川.やったらさっさと渡さんかい! 早よせんと、この女死ぬでぇ!
侑子.(苦しむ声が続く)
長谷川.どないするんや? えぇ?
村瀬.クソっ……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1-1 [権利書を渡さない(長谷川と決闘)]

村瀬.おるあぁぁ!

[長谷川を思いっきりタックルをする]

長谷川.かはっ!

村瀬.ワタルっ! 侑子さん連れて逃げろ!

西城.何言ってんだよ

村瀬.はやくしろ! 俺が何とかする!

西城.いいのか?

村瀬.……ああ、俺を信じろ

西城.……わかった

長谷川.このクソボケっ……! ええ度胸やないかい

[村瀬の腹を思いっきり3度蹴る]

村瀬.ぐっ! うぐっ! うがっ!

[長谷川、ジャケットの内側からバタフライナイフを出す]

長谷川.ワシの言うことは素直に聞いとかんと痛い目みるで 村瀬.てめぇ……!

侑子.ちょ、村瀬さんは!?

村瀬.早く逃げろ!

西城.侑子さん、はやく!

[西城が侑子の手を引く]

侑子.村瀬さんやめて! お願い逃げて! 村瀬さーんっ!

[西城、侑子が退室]

長谷川.(溜息)オドレなんや、アベンジャーズ気取りかい。えぇ?

村瀬.ごちゃごちゃと口の減らねぇ奴だな、かかってこいよ

長谷川.ソレ貰わんとワシの身も危ないんや。これが最後のチャンスやでぇ、どないすんねん

村瀬.わかってんだろ?

長谷川.ほーん。(微笑)ほんだら、元チャンプの実力っちゅうヤツを見せてくれや

村瀬.そっちこそ後悔すんなよ

長谷川.ワレ、そっくりそのまま返したるわ。殺す気で来んと後悔するで

村瀬.そのつもりだよ……うらああぁぁ!

 

[廊下にて]

侑子.ちょっと! ちょっと待って! このままだと村瀬さんが……!

西城.おい! 今は自分の事だけ考えろ……! わかったな!

侑子.でも…… 西城.いいから来い! 逃げるぞ!

 

[夜、花屋にて]

小町.(泣いている)

侑子.ごめんなさい、私のせいで……

西城.村瀬なら、きっと帰ってくる

小町.なんでそんな事言いきれるのよっ! アンタが置いてきたからでしょ! アンタが置いてこなければこんな事にはならなかったのにっ!

侑子.コマっちゃんやめてっ! ……西城さんを責めないで 小町.だって…だって……!

侑子.大丈夫、きっと大丈夫だから

[侑子が小町を抱きしめる]

小町.(大泣き)

[小町の電話が鳴る]

小町.ちょっとまって……あっ! 村瀬さんだっ!

侑子.え!? 小町.……もしもし! 村瀬さん! 大丈夫!

村瀬.(微笑)コマっちゃん…… 小町.村瀬さん今どこ!?

村瀬.侑子さん、近くに居る? 小町.うん 村瀬.だったら伝えてくれねぇか。店の近くの公園で待ってるって……

小町.わかった! すぐ行く!

村瀬.サンキューな

小町.あ、あのむらs……

[村瀬が電話を切る]

小町.切れちゃった……

侑子.何て言ってたの?

小町.店の前の公園に来てくれって 侑子.すぐに行きましょ!

 

[夜、公園にて]

侑子.村瀬さーん!

西城.はぁ…はぁ…… あっちには居なかった

小町.あ! ……アレもしかして!

[大木の陰に座り込んでいる村瀬を見つける]

侑子.村瀬さんっ!?

村瀬.はぁ…はぁ……!

小町.ちょっと! 大丈夫!?

村瀬.(微笑)俺は大丈夫だ……ほらよ

[村瀬は権利書が入ったファイルを侑子に渡す]

侑子.あ、ありがとうございます

村瀬.はぁ……くそっ……

西城.大丈夫か、立てるか?

小町.……きゃああぁ!

侑子.なに、どうしたの……!?

小町.血…血がぁっ!

西城.おい! 大丈夫かよ! 

侑子さん、救急車呼んでくれ!

侑子.は……はいっ!

[西城が村瀬の服を引き裂く]

西城.くそっ! 傷口はどこだ……

小町.(泣きながら)陽一ぃ! 死なないでよぉ!

村瀬.コマっちゃん……そんなピーピー泣くなよ 小町.ごめんっ……アタシが怖くて、電話なんか掛けちゃったから……

村瀬.コマっちゃんは悪くねぇよ……俺がトチっちまったから……

西城.傷口が三か所もある、小町さんココ押さえて!

村瀬.ワタル……お前、加奈ちゃんを、妹を大事にしろよ

西城.言われなくてもやってるよ。自分の心配だけしろ

村瀬.たった一人の、家族だろ……

西城.分かったから、もう喋るな 村瀬.侑子さん……

侑子.……なんですか?

村瀬.俺、侑子さんの、笑った顔が…好きなんすよね……

侑子.(静かに泣く)

村瀬.(微笑)何言ってんだ俺…ダサすぎだろ……

西城.おい! しっかりしろ!

小町.陽一! 起きてよ! 目を開けて!

侑子.村瀬さん! しっかりしてください!

[サイレンの音が鳴る]

 

[数日後、公園にて]

[大木に花を手向け拝む西城、そこに2人がやってくる]

小町.あ……

侑子.西城さん……

西城.どうも

侑子.西城さんも来てらっしゃったんですね

西城.ああ

[侑子と小町が木に花を手向ける]

侑子.あの、西城さんは……

西城.何も言わなくていい

侑子.え?

小町.……アンタが殺したんだ

侑子.ちょっと…!

西城.いいんだ、どう思われても構わん。過去は変わらないからな。それにもう会うことは無い

侑子.そうですか。どこか行かれるんですか?

西城.わからない。ただ、この場所には戻らない

侑子.そうですか

西城.じゃあ、失礼します。いろいろご迷惑をおかけしました

侑子.いえいえ、こちらこそ。いつも贔屓にしていただき、ありがとうございました

西城.では

[西城退室]

侑子.……行っちゃった 小町.手、合わせましょ 侑子.……そうね 小町.(合掌)

侑子.(合掌)

小町.陽一さん、侑子さんやアタシを助けてくれてありがとう。向こうでも元気でね

侑子.…… 小町.そろそろ行きましょ

侑子.そうね……あ! ちょっと待って

小町.ん?

侑子.お供え物忘れてた、先行ってて

小町.はーい [お酒やお菓子を添えると、大木の裏に違和感が生じた]

侑子.ん?

[大木の裏側を見ると一か所だけ抉れていた]

侑子.……

1-2[権利書を渡さない(西城と決闘)]

 

 

1-3[権利書を渡す]

 

 

 

 

 

 

村瀬.……分かった! 渡す!

[ゆっくりとファイルを渡す]

長谷川.おお、ええ子やないかい

[長谷川が侑子の首から手を放す]

侑子.ぷはっ! けほっ…けほっ……

村瀬.侑子さんを放せ!

長谷川.……好きにせぇ

[村瀬は侑子の拘束を解こうとする]

侑子.村瀬さん…ごめんなさい……こんなことに巻き込んじゃって

村瀬.あ? いや、いいんすよ。侑子さんが無事なら

[勢いよくドアが開く]

浜野.よぉー、長谷川ぁー

<浜野の奥から若衆がぞろぞろと来る>

長谷川.(舌打ち)なんじゃ浜野のおっさんかい。生憎ここは定員オーバーなんや、外してくれや

浜野.話はついたか

*長谷川.ああ

浜野.そうか……ならよかった

<浜野は懐から拳銃を取り出す>

浜野.だったらこいつらはもう要らねぇよな、

村瀬.おい。書類は渡したんだ、俺たちはもう関係ねぇだろ

浜野.そうだな。だがこの場に居る以上死んでもらうしかない

長谷川.ほうかい。じゃあ、わしはコイツを伯父貴に渡してイチ抜けさせてもらうで

浜野.その必要はない

長谷川.あ?

<村瀬に向いていた拳銃は長谷川に向き、腹部に2発の銃弾が放たれる>

長谷川.うっ……!

侑子.キャっ!

浜野.死体から奪うからな

長谷川.クソボケっ……!

浜野.次はお前だ ……じゃあな

村瀬.くそ、マジかよ!

<西城が横から素早いスピードで殴る>

浜野.ぐわっ!

村瀬.ワタル…お前……

長谷川.はぁ…キザオ君……お前何してんねん

西城.3人とも、死なれたら俺が困る。お前たちの為じゃない……

侑子.西城さん

長谷川.(微笑)どこまでもキザやのぉ

浜野.クソ共が、舐めやがって!

長谷川.……おい、はよ逃げぇ

村瀬.あ?

長谷川.女連れてはよ逃げや

村瀬.でもお前……

長谷川.はよ行かんかい!

<村瀬は侑子の手を取る>

村瀬.……侑子さん! はやく行こう!

侑子.え!? ……あ、ちょっと!

<村瀬は侑子を連れてその場から逃げる>

浜野.追え! 逃がすな!

<後を追おうとした若衆達を長谷川が捕まえて何度も殴る>

長谷川.おいチンピラ君どこ行くねん…ボケがぁっ! ……浜野のおっさんなぁ、わしはゾンビやからのぉ、殺したいならちゃんと頭撃たんとアカンでぇ。ゾンビ映画見たことないんかい。えぇ?

浜野.てめぇ調子のいい事言えるのも、今の内だぞ……! 死ねやぁ!

<廊下にて>

<何発か銃声が響く>

侑子.はっ……!

村瀬.侑子さん、早く!

侑子.でも西城さんが……!

村瀬.……アイツは…アイツは、あんなんで簡単に死ぬような、そんなヤワな奴じゃねぇよ

侑子.……

村瀬.だから、きっと大丈夫。……行こう

侑子.……ええ

 

 

<昼、公園にて>

<村瀬・侑子・小町がベンチに座っている>

小町.……そんな事があったんですか

村瀬.ワタルのヤツ、八百長断って…そんなことになってたのか。てっきりボクシング続けてるかと思ってた

小町.……お店は? お店はこれからどうなっちゃうんですか?

侑子.大事な書類一式、手元にないので近いうちにお店閉めないといけないんです

小町.だったら! 取られちゃいましたって、警察に行きましょうよ!

侑子.それも考えたんですけど…西城さんの妹さんが心配で……

村瀬.そうだよなぁ。しかも今頃誰の手に渡ってるか分かんねぇし

侑子.それにあの長谷川って人の名前も、本名かどうか……

小町.……それじゃあ、閉店って事ですか?

村瀬.またどっかで場所探して、新しく始めましょうよ!

侑子.そう、したいんですけど……

小町.けど?

侑子.ちょっと疲れちゃって、しばらくはいいかな、って

村瀬.……まぁ、また気分が戻った時に再開したらいいですよ!

長谷川.なんやー、花屋閉店するんかいなぁ、悲しいのぉ

<奥から長谷川と西城が歩いてくる>

侑子.……っ!

村瀬.てめぇ! 何しに来たぁ!

長谷川.おう、ちょいちょい! 待てや

村瀬.てめぇ、俺の気が変わらねぇうちに消えろよ……

西城.村瀬

村瀬.……ワタル

侑子.西城さん

西城.……すまない、迷惑かけた

村瀬.……ふざけんなよ

西城.……

村瀬.お前、佳奈ちゃんの治療費で金に困ってたんだろ

西城.?

村瀬.なんで俺に言ってくれなかったんだよ! 昔っから顔色一つ変えずに、全部一人で抱え込みやがって! 俺とお前の仲だろ! 俺に一言、一言だけ言ってくれれば……殺し屋なんて、やることなかったのに……!

西城.……本当に、すまない

侑子.村瀬さん……

長谷川.感動のシーン最中やけど、ちょっとええか?

村瀬.……なんだよ

<長谷川が胸を押さえて苦しむ>

長谷川.イテテっ……その前に、老人と怪我人には席譲らんとアカンって教わらんかったんかい、小二の春じゃい。ほれほれ、どいたどいた

<小町と侑子の間に座る>

長谷川.座るでー、よいっしょー。せや、お嬢ちゃんにプレゼントや

<長谷川が手に持っていた紙袋から血まみれのファイルを渡す>

侑子.……これって

長谷川.権利書や。まぁ血まみれで殆どなんて書いてあるか分かれへんけど、署名の部分と捺印さえ見えてりゃ書類としては効力があるから、使えんことは無い

侑子.どうして……

長谷川.なんでやろなぁ……わしにも分からんわ。とりあえず貰えるもんは貰ろときや

侑子.……ありがとうございます

小町.お店続けられるっとこと!?

長谷川.せやでぇ、良かったのぉ。このキザオ君に感謝しいや

村瀬.またこの権利書を巡って、誰かが奪いに来るんじゃないのか

長谷川.来るかもしれんのぉ、でもそれはワシらとは一切関係のない連中や

村瀬.どうしてそう言い切れるだよ

長谷川.ワシを弾いた浜野と造園業者の奴らは銃刀でサツにしょっ引かれとる、せやから、しばらくはサツの睨みが効いて組自体が大人しゅうなるやろ

侑子.よかった……

長谷川.安心するんわまだ早いで、土地の値が張ってるのは変わらんからの、俺みたいな地上げ屋とか自称コンサル詐欺師がわんさか噛みついてくるかもしれへんから、警戒はしとかなあかんな

村瀬.ワタルの妹は、加奈ちゃんは大丈夫なのかよ。お前の手下は病室を知ってんだろ?

長谷川.(微笑)そもそもワシに手下なんか居らんわい

村瀬.……はぁ?

長谷川.恥ずかしい話、病院の前で張ってるっちゅうんはハッタリじゃい。妹の場所はワシしか知らん

侑子.え? じゃあチューリップの話は……?

長谷川.あれはのぉ、お嬢ちゃん花渡すとこ張っとったんや、したらその相手が丁度ウチのお抱えヒットマンやったっちゅう話や

村瀬.なんだよそれ

長谷川.ワシは生粋の博打打ちやからの、ヒリヒリさせてもろたわい

侑子.長谷川さん

長谷川.なんじゃい

侑子.どうしてそこまで……

長谷川.せやからさっきも言ったやろ。気ぃが変わった、ただそれだけじゃい。あ、せや、キザオ君も何か言いたいことあるんやなかったっけ?

村瀬.あ?

西城.……俺は、自首しようと思う

侑子.え?

長谷川.コイツなりのケジメやと。ホンマごっつアホやろ、ワシはちゃーんと止めたで

村瀬.お前自首するって、加奈ちゃんはどうするんだよ

西城.加奈も徐々に快復に向かってるし、貯めた金は足がつかない様に現金で隠してある。その金を、村瀬さんに預かってほしい

村瀬.……そんなこと急に言われてもなぁ

西城.加奈が退院して余ったら使ってもらって構わない

村瀬.余ったらって……幾らだよ

西城.……6000万

小町.えぇ!?

村瀬.ろ、6000万!?

西城.ああ

村瀬.でも自首って……お前、帰ってこれんのかよ

西城.……わからない

長谷川.キツいやろなぁ。昔ならまだしも、今は1人やっただけでも12.3年は食らう

村瀬.……どうせお前の事だから、止めても行くつもりだろ

西城.……ああ

村瀬.わかった……その代わり、外に出れたら必ず俺のところに戻って来いよ

西城.ああ、必ず帰ってくる

村瀬.絶対だぞ

西城.絶対だ

<長谷川が立ち上がる>

長谷川.……イテテっ。さてっ! ワシはハローワークでも行ってくるかのぉ

西城.村瀬さん、侑子さん、小町さん。この度は本当にご迷惑おかけしました……

侑子.……また、いつでもお店にいらしてくださいね

西城.はい! それでは……

村瀬.ワタル!

西城.……なんだ

村瀬.負けんなよ!

西城.ああ

長谷川.……なぁキザオ君、最後に何食いたいんや。あ、せや! その6000万で焼肉行こか! 焼肉! 他人の金で食う焼肉ほど旨いモンは無いでぇ

<長谷川、西城が歩きながらフェードアウト>

村瀬.はぁ……

侑子.行っちゃいましたね

村瀬.なんか、どっと疲れたー!

侑子.そうですね

村瀬.あ、俺今から加奈ちゃんとこの病院に行くつもりですけど、よかったら来ませんか?

侑子.私なんかが行ってもいいんですか? 会ったこともないのに……

村瀬.いいんすよ

小町.あの、その前にアタシからもちょっといいですか?

侑子.ん?

村瀬.なに?

小町.……アタシお腹空いちゃいました、なんか食べ行きません?

侑子.……

村瀬.……ぷっ

<侑子・村瀬が大笑い>

小町.もー! 何で笑うのー!?

侑子.いつも通りだなぁーって

小町.いつも通りで悪うーございましたー!

村瀬.わかったよ、なんか食べ行きますかっ

小町.わーい! アタシお寿司ー!

村瀬.はぁ!? 贅沢言うなよ!

侑子.あ! いいかもー! 私、最近お寿司食べてないからなー

村瀬.ちょっと侑子さんまでやめてくださいよー!

[楽し気な会話でフェードアウト]

 

 

【ラバーガール】祭りの中継

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キャスター 不問
レポーター 不問

キャスター.以上、お天気コーナーでした。さぁ続いてはおいでよふるさとのコーナーです。今日は青森県のようですね、早速行ってみましょう。テレビ青森の大水さーん
レポーター.はいはーい大水でーす!
キャスター.よろしくお願いします
レポーター.よろしくお願いしまーす!
キャスター.はーい
レポーター.飛永さーん! どんざーなー!
キャスター.……なんでしょうか?
レポーター.飛永さんも言ってみてください! どんざーなー!
キャスター.どんざーなー
レポーター.ありがとうございますー
キャスター.大水さん?
レポーター.はい?
キャスター.どんざーなー と言うのは一体どういう意味なんでしょうか?
レポーター.はい、これはですね青森の方言でお尻の穴という意味です
キャスター.なんで事言わせるんですか。こっちは全国放送なんですけども
レポーター.そうでしたねー
キャスター.謝罪してください
レポーター.全国の皆さん、先走った発言申し訳ありませんでした。それではみなさん一緒に行きましょう! どんざーなー?
キャスター.そういうことじゃないです。言わせないでください
レポーター.大水さん
キャスター.はいはい
レポーター.今日の特集は何でしょうか?
キャスター.飛永さん
レポーター.はい
キャスター.今日の特集は何だと思いますか?
レポーター.聞き返さないでください
キャスター.今日の特集は東北三大祭りの一つ、ねぶた祭りです!
レポーター.なるほどねぶた祭りですか、ですからたくさんの方がそちらにいらっしゃるんですね?
キャスター.いや、そういう事ではないと思うんですけど
レポーター.そういう事だと思いますよ
キャスター.飛永さん
レポーター.はい
キャスター.ねぶた祭りが具体的にどういった祭りかっていうのはDo you know?
レポーター.急に英語ですね。ちょっとあまり分からないので教えていただてもよろしいでしょうか
キャスター.わかりましたー。まぁ簡単に説明するとですね、白い着物を着たハネトと呼ばれる人たちが「らっせらー」という掛け声ともにねぶたの周りを飛び跳ねる、というのが特徴ですね
レポーター.なるほど。大水さんの周りにいらっしゃる白い着物の人達がハネトですね?
キャスター.いや、この人達は違うと思いますけど
レポーター.絶対そうだと思いますよ
キャスター.そして何と言っても特徴的なのがですね、まぁこれは全国的にも有名だと思いますけども。山車(ダシ)は一般的な神輿タイプではなくてですね、戦国武将などを模った……
[レポーターが形の真似をする]
レポーター.こういった形のですね
キャスター.見たことありますねそういうの
レポーター.こ…こうかな?
キャスター.もう大丈夫ですよ
レポーター.こうだったっけ?
キャスター.もう大丈夫です
レポーター.ちょっと書きますね!
キャスター.もう大丈夫ですから大水さん
レポーター.……わっかりましたー
キャスター.何でちょっと不満そうなんですか。大体分かりましたんで早く実物を見てみたいですねー
レポーター.そうでしょー、丁度僕が立っていますこの道路にねぶたの山車がやって来るという事で、我々スタッフ一同この空の明るいうちから待機してたんですよ
キャスター.そうなんですか、ありがとうございます
レポーター.なんもなんもー
キャスター.それはいい方言ですね
レポーター.ありがとうございますー
キャスター.ちょうど暗くなり始めた今ぐらいが山車が一番きれいに見られそうですね
レポーター.ええ、すごくキレイでしたよー
キャスター.あ、もう行っちゃったんですか?
レポーター.はい
キャスター.行っちゃったんですか?
レポーター.ついさっき行っちゃいました
キャスター.あの全部行っちゃったんでしょうか?
レポーター.はい
キャスター.そうですか、急に残念な中継になっちゃいましたね。どうしましょうか、せめて先ほど撮ったねぶたの映像は無いんでしょうか?
レポーター.そうおっしゃると思いましたー
キャスター.そちらお願いいたします
レポーター.はーい。先ほど撮ったねぶたの映像をですね、全国の皆様の為にバッチリとこの目に焼き付けましたー
キャスター.そう言われても困りますが
レポーター.とくとご覧ください
[レポーター目を見開く]
キャスター.……なおさら困ります大水さん。大水さん? 大水さーん!?
レポーター.はい
キャスター.ちょっと目を見せられても意味が分かりませんので、あのカメラで捉えた映像は無いんでしょうか?
レポーター.そうおっしゃると思いましたー
キャスター.当然言いますよね
レポーター.もちろんございますよー
キャスター.お願い致します
レポーター.ただあるにはあるんですけども、あいにく僕の携帯ナイトモードが付いてないんですよ
キャスター.ムービーですか?
レポーター.はい、なのであまり映りが良くないかと
キャスター.ちょっと全国放送なので映りの悪いムービー見せられても困りますのでテレビカメラで収めた映像は無いでしょうか?
レポーター.はい、そうなんですよ
キャスター.無いんですか
レポーター.はーい
キャスター.そうですか。ちょっとね、そちらで結構前から待っていただいたと思うんですけども
レポーター.ねぶたが通った時スタッフ一同何やってたんでしょうか?
キャスター.申し訳ございません。ねぶたが通った時スタッフ一同ナンパをしておりまして
レポーター.最低なスタッフですねー。あとで叱っといてください
キャスター.ちょっと待ってください飛永さん
レポーター.確かに彼らは最低なスタッフかも知れません。ただ、僕にとってはかけがえのない最高の仲間なんです
キャスター.でも最低は最低ですよね。確認が取れたんでよかったんですけども。そうですか、映像はムービーしかないんですね?
レポーター.はい
キャスター.どうしましょうか
レポーター.じゃあこういうのはどうでしょうか?
キャスター.はい
レポーター.もし今テレビを見ている人達の中でどうしてもねぶたの映像が見たいという方は今から僕の携帯のアドレスを言いますので
キャスター.大丈夫ですか?
レポーター.そちらに空メールを送信してください
キャスター.そうですか、ちょっと大水さんの返信が大変な事になると思うんですけども
レポーター.なるほど
キャスター.はい
レポーター.じゃあこうしましょう。その中から抽選で10名の方にテレビ青森特製ステッカーを差し上げます
キャスター.ムービーをください。ステッカーではなくムービーをください
レポーター.ではメモの用意をいいですか?
キャスター.(上のセリフに被せる)大水さん? 無視しないでください
レポーター.では言いますねー。すべて小文字で
キャスター.(上のセリフに被せる)大水さん?
レポーター.はい
キャスター.あの、ムービーくれると約束してください
レポーター.んー!……いいでしょう!
キャスター.渋りましたねー。ではアドレスお願いいたします
レポーター.はい。すべて小文字でaomori.ringo-daisuki@
キャスター.かわいいアドレスですね
レポーター.大丈夫ですか? aomori.ringo-daisuki@ すみませんね複雑なアドレスで
キャスター.覚えやすいですよ
レポーター.で、その後がですね oomizu.ne.jpです
キャスター.果たして届くんでしょうか? あの大水さん、携帯の機種は何を使ってるんでしょうか?
レポーター.大水です
キャスター.果たしてあるんでしょうか。では届くか届かないかは視聴者の皆さんにお任せするとしましょう
レポーター.はい
キャスター.ではですね、ちょっと時間なくなってきたんですけども。もう一度確認しますけどもねぶたは今日見られないんですよね?
レポーター.はい!
キャスター.ハッキリと言いましたね。では来年こそはちゃんとした映像を見せてくださいね
レポーター.いいでしょう!
キャスター.反省してくださいねー
レポーター.いえーい!
キャスター.二度とチャンスは無いと思いますが。じゃあありがとうございましたー
レポーター.あー! ちょっとまってくださーい!
キャスター.はい
レポーター.最後に一つ質問してもいいですかね?
キャスター.何でしょうか?
レポーター.これNG大賞出れますかね?
キャスター.知るかい!

 

【ラバーガール】電報

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古いネタなので携帯の機種だけ現代風にしてます 

 

受付.男
客.不問

[SE:電話の鳴る音]
受付.はい、こちら電報受付センターの飛永です
客.大水です
受付.ご丁寧にどうも
客.あのー、友達の結婚式に電報出したいんですけども
受付.そうですか、ありがとうございます
客.実際何日ぐらいに届きそうですかね?
受付.指定した日に電報は届けることが可能ですけども
客.あ、そうですか
受付.あのー、お客様のお友達の結婚式のご予定はいつ頃でしょうか?
客.昨日です
受付.確実に届かないですね
客.そうですよね
受付.やはり過去になってしまいますと……
客.そっかー。でもせっかく電話したんで、じゃあ別の友達に電報出してみようかなー
受付.では電報を出されるということでよろしいですか?
客.どっちでもいいです
受付.決めていただけますか
客.じゃあヤメときます
受付.そうですか
客.なーんちゃって
受付.そうですか。では電報を出されるという事でよろしいですか?
客.……はい
受付.何かご不満でしょうか?
客.いや大丈夫です
受付.大丈夫ですか? ではお客様のお電話番号をお願いいたします
客.わかりました。お客様の電話番号ってのは電報を受け取る人の電話番号言えばいいんですよね?
受付.いえ、電報を出される方の電話番号で構いませんよ
客.え? 電報を出される方ってのは、やっぱ電報を受け取る人って事ですよね?
受付.いえ、そうではなくてですね
客.いやでもさっきお姉さんが……
受付.わたくし男なんですけども
客.え? そうなんですか?
受付.はい、初めて間違われましたね。男です
客.すみません
受付.えっと単純に大水様の番号を教えていただければ構いませんが
客.え! なんで僕の名前知ってるんですか!?
受付.初めに名乗られたので
客.あ、そっか
受付.はい、ではお願いします
客.じゃあ言いますね
受付.はい
客.6番です
受付.何の番号でしょう? 一桁ということは無いと思うんですけども
客.これ6台目の携帯なんですよ
受付.そういう事を聞きたいのではなくてですね……
客.あー、すみません間違えてました。じゃあ言いますね
受付.お願いします
客.Iphoneの……
受付.あの機種ではなくてですね、電話番号を頂きたいんですけども
客.え! 電話番号って何ですか!?
受付.初めて聞かれましたね。えっとー携帯ですか?
客.はい
受付.そしたら090から始まる番号を……
客.あー! すみません間違えてました
受付.はい
客.あのこれって080からでも大丈夫ですかね?
受付.もちろん大丈夫ですよ
客.じゃあ言いますね
受付.お願いいたします
客.090の
受付.080ではないんですね
客.7007の61859です
受付.一桁多いですね。こちらだと間違ってると思うんですけど
客.はぁそうですか
受付.はい
客.じゃあ最初の0抜いてください
受付.そこじゃないと思うんですけども。あの、最後の一つを抜けば大丈夫ですか?
客.いや、そこは絶対間違ってないですよ
受付.そうですか
客.いや全部あってると思いますよ
受付.全部あってますか?
客.はい
受付.ではコチラの12桁で承らせて頂きたいと思います。
客.はい
受付.そうしましたら次に電報のデコレーションはどう致しますか?
客.えっとデコレーションってのは何ですか?
受付.コチラですね、普通の電報にプラス幾らか頂きますと、例えば音が鳴ったりする電報ですとか、ぬいぐるみの電報、あと漆塗りの電報などに変更が出来ますけども
客.なるほど、じゃあ漆塗りのぬいぐるみでお願いします
受付.そういった気持ち悪いものは取り扱ってないんですけども
客.あぁそうですか。じゃあ例えば、漆塗りの電報って幾らぐらいなんですか?
受付.そちらですねプラス5000円になります
客.あ! そんな高いんですか!?
受付.そうですね
客.そっかー。でも漆塗りの電報とか送ったらきっと友達も"うるしい"でしょうねー
受付.……そうでしょうねー
客.あれ? 聞こえてなかったですか?
受付.聞こえてましたよー
客.あのギャグ言ったんですけど
受付.ハッキリ聞こえておりました
客.面白くなかったですか?
受付.そうですね、ちょっとあまり面白くなかったかなーって思うんですけども
客.ふふっ
受付.何故喜んだんでしょうか? ……あのーすみません、漆塗りでよろしいでしょうか?
客.いやー!いいけど高いからなー!
受付.もしお値段の事気にされてるようでしたらデコレーション無しで送ることも出来ますけども
客.あ、そうなんですか!
受付.はい
客.先に言ってくださいよ!
受付.申し訳ございませんでした。ではどうなさいますか?
客.じゃあせっかくなんで漆で
受付.まさかの漆ですねー。漆でよろしいですか?
客.はい
受付.はいかしこまりました。……そうしましたらお待たせいたしました、電報の内容を聞いていきたいと思います
客.もう内容ですか
受付.はい
客.いやーなんか恥ずかしいですね
受付.まぁーお気持ちは分かりますが
客.例えば僕が書いた文章をそちらに送って、それをそのまま家に届けるみたいなサービスはやってないですかね?
受付.そうですね、ちょっとそういったサービスは郵便局で手紙という形やってると思うんですけども
客.あ、そっかぁ
受付.電報ですけどよろしいですか?
客.……はい
受付.何かご不満でしょうか?
客.いや大丈夫です
受付.もしよっぽど恥ずかしいようでしたらインターネットでの受付も……
客.いえ結構です
受付.結構ですか。そうしましたら口頭でお願い致します
客.じゃあ言いますねー
受付.はい
客.えー「お元気ですか? では早速本題なんですが、ジュースを買ってきてとさっき頼んだんだけど、ついでにしょっぱいお菓子も買ってきて頂戴」……以上です
受付.かしこまりました。……あの大変失礼だと思うんですけども、コチラ恐らく緊急の要件だと思いますのでメールか電話で伝えたほうがよろしいかと思うんですけども
客.……あー!そっかそっか、そうですよね!
受付.電報出すの止めときますか?
客.ん″ー
受付.悩むことないと思うんですけども
客.ど、どうしよっかなぁ
受付.悩まなくてもいいと思うんですけども
客.じゃあちょっと今確認してみるんで、ちょっと待っててもらっていいですか?
受付.はい
[客、携帯から離れる]
客.なぁ! 今お前に電報出そうと思ったんだけど
受付.まだ出かけてないんですか?
客.しょっぱいお菓子を買ってもらおうとおもってさ
受付.(上のセリフに被せて)あの直接言われたらどうでしょうか?
客.あー!そっかそっかそっか!わかったわかった!
受付.(上のセリフに被せて)あの、電報出すことないと思うんですけども
客.はいはーい
受付.(上のセリフに被せて)大水様
客.もしもしー
受付.はい
客.あの今友達と電報出すかどうかで話し合ったんですけども
受付.聞こえておりました
客.すみませーん。思い切って出す方向で
受付.二人とも馬鹿か